2024/04/21

読む公式 断面係数(3)

今回の「読む公式 断面係数(3)」は、「力と変形」について考えてみましょう!



力と変形


前回の「読む公式 断面係数(2)」では、「力」について考えてみました。

  • 「力」を加えれば、物体は必ず「変形」する。
  • 「どのくらいの力」なのかは、「変形」から知ることができる。

前回の内容を、復習してみましょう!

「力」を加えれば、物体は必ず「変形」する

ある棒があります。

ある棒に、「おもり」をぶら下げます。


ある棒は、変形(伸び)します。


「おもり」をぶら下げたら、棒が「伸びた」
非常に、シンプルな話ですよね?
「力」を加えれば、必ず物体は「変形」する、というのも、シンプルな話です。



では、これの逆を考えてみて下さい。
「変形」から「力」を知ることは、できそうでしょうか?

先ほど、「おもり」をぶら下げて伸びた棒の「伸びた時の長さ」をメモしておいたとしましょう。


別の棒を用意して、「おもり」をぶら下げて、棒が伸びた時の長さが、
あなたの手元にあるメモの「伸びた時の長さ」と同じ長さだった時、「おもり」がどのくらいの重さなのか、推測できますよね?

そうです、前に実験した同じ「おもり」と同じ重さで間違いありません。


「伸びた時の長さ」から、どのくらいの重さの「おもり」なのかが分かります。

これを言い換えてみましょう。

「変形」を知れば、「どのくらいの力」なのかが分かります。

つまり、

「どのくらいの力」なのかは、「変形」から知ることができるようになるということです。




変形の最終形は「壊れる」。(伸びて、伸びて、最終的にちぎれる)


ある棒があります。


ある棒に「おもり」をぶら下げます。


棒は伸びます。

もう1つ「おもり」を増やします。

棒はもっと伸びます。


もう1つ「おもり」を増やします。

棒はもっと、もっと伸びます。



いっぱい「おもり」を増やします。

棒は、伸びることができる限界を超えた時点で、ちぎれます。


「おもり(力)」が増えていくと、棒は伸びて、伸びて、最終的には、ちぎれてしまいます。

「変形」の最終形は、「壊れる」です。


どのくらいの力で壊れるのかを、どうやったら知ることができるのか?

この「読む公式 断面係数」で、何度も言ってきました。

断面係数は、ただの道具でしかなくて、

重要なことは「どのくらいの力で壊れるのかを、どうやったら知ることができるのか?」です。


・「どのくらいの力」なのかは、「変形」から知ることができます。

・「変形」の最終形は、「壊れる」になります。


「どのくらいの力で壊れるのかを、どうやったら知ることができるのか?」についての、が、これで出るような気がしませんか?

残念! 実は、解はでません!

なぜなら、棒がちぎれるかどうかは、棒の材質に左右されるからです!

棒が、ゴムだったら?
棒が、石だったら?
棒が、プラスチックだったら?

ゴム、石、プラスチックが、壊れる時の力は、当然、違いますよね?

ゴム、石、プラスチックの変形量(伸びた時の長さ)が同じだった時に、「どのくらいの力」なのかは、材質に左右されますよね?


結局、「どのくらいの力で壊れるのか?」を知ることはできないのでしょうか?

大丈夫です!

知ることはできますよ!

棒がちぎれるかどうかは、棒の材質に左右されます。

ゴム、石、プラスチック、、、。

物体の材質は、無数にあります。

それぞれの「壊れる」時の力があるので、「壊れる」時の力も無数に存在することになります。

ですが、建築に使われる材質は、無数ではありません。

建築で使う材質は3つかありません。

建築で使われる材料は、「コンクリート」と「鉄」と「木」しかありません。


「コンクリート」と「鉄」と「木」だけです。


無数にある材質のことなんか、忘れてしまって、

この3つの建築材料の「壊れる」時の力さえ、押さえておけば、良いわけですよね?

・「コンクリート」の棒が、変形して最終形態の「壊れる」時の力

・「鉄 」の棒が、変形して最終形態の「壊れる」時の力

・「木」の棒が、変形して最終形態の「壊れる」時の力



3つの材質の「壊れる」時の力が「どのくらいの力」なのかを知れば、

「どのくらいの力で壊れるのかを、どうやったら知ることができるのか?」についての、がでます!


建築材料が3つしかなくて良かったです、、。
とりえず、「コンクリート」、「鉄」、「木」の材質さえ、押さえておけば、建築のお仕事ができます。。。


まとめて「最大強度」と呼んでしまおう!

どのくらいの力で壊れるのかを、どうやったら知ることができるのか?
という問題の解として、

「コンクリート」、「鉄」、「木」、それぞれの「壊れる」時の力を知れば良いのですが、困ったことに、3つの材料の「壊れる」時の力は、それぞれ違います。

断面係数は、「コンクリート」にも「鉄」にも「木」にも、共通して使いたい道具です。
なのに、それぞれの「壊れる」時の力が違うと、共通して使えそうにありません。

多少、強引ですが、そういう時は、3つをひっくるめて、「最大強度」と呼んでしまいましょう!

「最大強度」という1つの言葉に、「コンクリート」も「鉄」も「木」も含ませてしまいます。

強引ですよね、いいんでしょうか?
いいんです、構造なんて、こんなもんです。
ちょっと便利に使いたいなぁ、って時に、ご都合主義に、好き勝手にやっちゃうのが構造です。

ちっさいことは、気にしないのが、構造の勉強のコツです。

それでは、また。

次回は、「読む公式 断面係数(4)」です。

2024/04/18

読む公式 断面係数(2)

前回の「読む公式 断面係数(1)」でも、言いましたが、

「断面係数」は、ただの道具です。ただの道具である「断面係数」に意味は、ありません。

重要なことは、「どのくらいの力で壊れるのかを知る」ことです。


また、壊れ方には種類があるとも言いました。下の4つです。

  • 引張って、ちぎる。
  • ぎゅうぎゅうに上から押して、つぶす。
  • のこぎりでギコギコ、切る。
  • 棒の両端を持って曲げて、折る。

その内の1つである「どのくらいの力で曲げれば、折れる(壊れる)のか」を知るための道具が「断面係数」になります。



「曲がる」を「圧縮・引張」に変換して考える

断面係数」は、「どのくらいの力で曲げれば、壊れるのか」を知るための道具です。

では、「曲がる」とは、どういうことなのか?

前回、「曲がる」ということについて、深く考えてみましたよね?

大事なことなので、もう一度、「曲がる」ということについて、復習してみましょう!


「曲がる」というのは、ある直線のものが、曲線状に変形することです。


曲線状に変形させるには、どうしたらいいのか?

普通に考えれば、両端を持って曲げたり、おもりを載せたりします。

でも、それ以外に曲線に変形させる方法があります。

上端を押して(圧縮)、下端を引張れば(引張)、同じように、曲げ変形させることができます。



「曲がる」現象は、圧縮と引張で考えることができるというわけです。

そうすると、「どのくらいの力で曲がって、壊れるのか?」は、

「どのくらいの力で引っ張れば(押せば)、壊れるのか?」に、

置き換えて考えることが可能になります。


「曲がる」よりも、「圧縮・引張」で考えた方が、ずっとシンプルになります。


「断面係数」は、「曲げ」を検討するための道具ですが、直接「曲げ」にアプローチするのではなく、一旦「圧縮と引張」に変換してから、アプローチする手段をとっている道具です。


冒頭で、壊れ方には種類があると言いました。下の4つです。

  • 引張って、ちぎる。
  • ぎゅうぎゅうに上から押して、つぶす。
  • のこぎりでギコギコ、切る。
  • 棒の両端を持って曲げて、折る。

その内の1つである「どのくらいの力で曲げれば、折れる(壊れる)のか」を知るための道具が「断面係数」になります。


「断面係数」は、「曲げ」を検討するための道具ですが、直接「曲げ」にアプローチするのではなく、一旦「圧縮と引張」に変換してから、アプローチする手段をとっている道具です。


そのため、4つの壊れ方の種類の内、「ちぎる(引張)」と「つぶす(圧縮)」を考える必要があります。

  • 引張って、ちぎる。
  • ぎゅうぎゅうに上から押して、つぶす。
  • のこぎりでギコギコ、切る。
  • 棒の両端を持って曲げて、折る。

 

「どのくらいの力」を「どのくらいの変形」に変換して考える


「曲がる」現象は、圧縮と引張に変換して考えることができると言いました。


でも、待ってください。


曲げられた曲線を、 「圧縮と引張」で再現するとき、「どのくらいの力」を加えれば、同じ曲線を再現できるのでしょうか?




「力」というのは、目にすることができません。

身体を誰かに押されるとか、引張られるとかすると、「力」を感じることができます。

強い力で押されるとか、そっと押されるとかの、「力」の強弱も感じることができます。



自分自身が「力」を受けるなら感じることができます。

ですが、物体が「力」を受けている場合になると感じることはできません、当然の話です。

だったら、物体が「力」を受けている場合は、どのようにすれば「力」を感じることができるのでしょうか?

答えは、簡単です。


「力」を加えれば、物体は必ず「変形」する。


この事実を知っていれば、「力」を感じることができます。

感じるだけじゃなくて、「どのくらいの力」なのかを「変形」から、知ることもできるようになります。


「ある棒」があるとします。


その「ある棒」に、「おもり」をぶら下げるとします。


「ある棒」は、変形(伸び)します。


「ある棒」が伸びる、この伸びたときの長さを計って、メモしておいたとします。


ここまでのことを、忘れてください。

「ある棒」のことも、「おもり」のこともです。

でも、あなたの手元には、「伸びた時の長さ」をメモした紙が残っています。


さて、問題です。

「ある棒」があります。

「ある棒」に「おもり」をぶら下げました。

「おもり」は、どのくらいでしょうか?

ヒントとして、「伸びた時の長さ」を図示します。



あなたは、「伸びた時の長さ」のメモを持っています。

そのメモの「伸びた時の長さ」と、ヒントである「伸びた時の長さ」が同じです。

だったら、問題の「おもりはどれくらいでしょう?」の正解は分かりますよね?



「力」を加えれば、物体は必ず「変形」する。

この事実を知っていれば、「力」を感じることができます。

感じるだけじゃなくて、「どのくらいの力」なのかを「変形」から、知ることもできるようになります。





さて、冒頭の話に戻りましょう。


曲げられた曲線と、 「圧縮と引張」で再現するとき、「どのくらいの力」を加えれば、同じ曲線を再現できるのでしょうか?



これについての、答えが、おぼろげながら、推測できませんか?


先ほど、「力」について考えてみました。

  • 「力」を加えれば、物体は必ず「変形」する。
  • 「どのくらいの力」なのかは、「変形」から知ることができる。


だったら、下の図の「短くなった部分」と「長くなった部分」に着目すれば、曲げられた曲線を「圧縮と引張」で再現するとき、「どのくらいの力」を加えれば、同じ曲線を再現できるのか、推測できそうじゃありませんか?





なんか、 「曲がる」曲線を「圧縮・引張」で再現できそうな気がする

そんな気がしてきたでしょうか?

この「できそうな気がする」が、大事なんです。


とりあえず、目的を達成できそうな道があるので、その方向で考えてみる。


構造の勉強するには、このくらいの軽い気持ちが、ちょうどいいです。

正解じゃなくても、正解に近いかなぁ、ぐらいが構造を理解するには、早道だったりします。


今回は、ここまです。

次回の「読む公式 断面係数(3)」は、今回考えたことをさらに深堀りしていきます。


2024/04/16

読む公式 断面係数(1)



そもそも論として、「断面係数」って、何なんでしょうね?

答えは、「断面係数」とは、ツール、つまり道具です。


では、何に使う道具なんでしょうか?

答えは、どのくらいの力で壊れるのかを知ることのために使う道具です。


繰り返しますが、

「断面係数」は、どのくらいの力で壊れるのかを知るための、道具でしかありません。

道具は、道具でしかありません。道具は便利に使いこなせるのかどうかだけの問題です。

誤解を恐れずに言えば「断面係数」を知る必要などないと、個人的には思います。

重要なのは、どのくらいの力で壊れるのかを、どうやったら知ることができるのか?、ということです。


壊れるって、何でしょう?


建物の梁や柱が壊れたら、困りますよね?

だから、建築士が設計をする必要があります。


でも待ってください、壊れるって、何でしょう?

壊れるって、具体的には、どんな状態を指すんでしょうか?


引張って、ちぎる

ぎゅうぎゅうに上から押して、つぶす

のこぎりでギコギコ、切る

棒の両端を持って曲げて、折る


これ、全部、壊してますよね?

建物を設計するときには、それぞれの壊れ方に対して、それぞれの検討が必要になります。

どれか1つだけ検討してOKとは、いきません。全部、検討しなくちゃいけません。

壊れ方には、種類があるわけです。


断面係数」は、「曲がって、折れる」壊し方をするときに、使う道具です。


冒頭でも言いましたが、「断面係数」は、ただの道具です。

重要なのは、どのくらいの力で壊れるのかを、どうやったら知ることができるのか?、ということです。

また、壊し方には種類があり、「断面係数」は、「曲がって、折れる」ときに使います。

なので、どのくらいの力で「曲げて」壊れるのかを、どうやったら知ることができるのか?について、考えていきましょう!




どのくらいの力で「曲げて」壊れるのか?


「曲がるって、どういうことなのか?」、真剣に考えてみたことがありますか?

「曲がる」は「曲がる」でしょうよ。真っ直ぐの棒が曲線状になることでしょう?

そうです、直線が曲線に変形するのが「曲がる」ってことですよね。

でも、もっと深く考えていかないと、構造設計ができないんです。

だから、もっと深く「曲がるって、どういうことなのか?」について、考えてみましょう!


ある長さの棒があったとします。

棒はまっすぐです。それを曲げてみます。

そうすると、棒は、直線から曲線に変形します。


これについて、深く、考えてみましょう。

棒は、線ではありません、立体です。

立体なので、上端と下端があります。

よく見てみると、上端は短くなって、下場は長くなっています。


さぁ、頭の体操です。

ある棒を、「曲げず」に、直線から曲線に変形させるには、どうしたらいいでしょうか?

「曲げず」にというのは、棒の両端を持って曲げたり、棒の上におもりを置いたりしないという意味です。

・・・・・。

答え:上端を押して、下端を引っ張る。


普通に、棒の両端を持って、直線から曲線に変形させたときに、上端が短くなって、下端が長くなった。

その現象だけに、着目する。

「曲げず」に、同じ曲線を再現したいのなら、「上端が短くなって、下端が長くなる」現象を別の方法で起こさせればいいわけです。


上端を短くするには、どうすればいいのか?

押せば、短くなる(圧縮)


下端を長くするには、どうすればいいのか?

引張れば、長くなる(引張)


「曲がるって、どういうことなのか?」

「曲がる」って、ある直線のものが、曲線状に変形することです。

曲線状に変形させるには、どうしたらいいのか?

普通に考えれば、両端を持って曲げたり、おもりを載せたりします。

でも、それ以外に曲線に変形させる方法があります。

上端を押して(圧縮)、下端を引張れば(引張)、同じように、曲げ変形させることができます。


「曲がる」現象は、圧縮と引張で考えることが、できるというわけです。

そうすると、「どのくらいの力で曲がって、壊れるのか?」は、

「どのくらいの力で引っ張れば(押せば)、壊れるのか?」に、

置き換えて考えることが可能になります。


「曲がる」よりも、「圧縮・引張」で考えた方が、ずっとシンプルになります。


「断面係数」は、「曲げ」を検討するための道具ですが、直接「曲げ」にアプローチするのではなく、一旦「圧縮と引張」に変換してから、アプローチする手段をとっている道具です。


次回の「読む公式 断面係数(2)」で、その辺のところを掘り下げて考えてみましょう!

2024/04/11

構造屋の本棚 構造全般 「ねじ総合カタログ」

 もっと、ねじについて知ろう!

いっぷく構造屋の本棚から、マニアックな本を紹介します。

今回、紹介する「ねじ総合カタログ」は、東京鋲螺協同組合から出版されています。

写真は2010年版になっていますが、最新の2024年版が出ています。3960円(税込み)です。



この「ねじ総合カタログ」の「まえがき」には、

本書は販売業者の団体である東京鋲螺協同組合規格委員会がねじを取扱う人にとってねじと関連部品の規格や新製品の寸法形状等を、見やすく、使いやすく、日常の商取引に利用出来る様に編集しました。

とあります。


「まえがき」からも分かるとおり、この本は、ねじ業界の人に向けて、出版されているものです。

構造屋さんのための本ではありません。

構造屋のための本ではないのですが、構造屋にとって、使える本です。


JIS規格書として使う

構造屋をやっていると、「ねじ・ボルト・アンカーボルト・ターンバックル」などの、形状や寸法を、調べることが多々あります。

こういった資料は、ウェブ上のJISデータベースで検索することができます。

ですが、このデータベースが、けっこう見ずらいんです。

データベースが駄目なら、JISから出ている、ねじの規格書を買うという手もあるのですが、高価な上、本自体も分厚いです。本棚のスペースに余裕がなくなってきているので、わたしなどは、購入を躊躇してしまいます。


そんな時に、この「ねじ総合カタログ」は活躍します。

このカタログは、2部構成になっています。

第1部は、流通されている商品のJIS規格の抜粋が整理されて掲載されています。

第2部は、JIS規格以外の市場で取引されている商品が掲載されています。

他にも、有益な参考資料も載っています。



眺めるだけで、わくわくする

ねじの頭の形状に、たくさんの種類があるのを知っていますか?

ナットや、座金も、たくさんの種類があるのを知っていますか?

「ねじ総合カタログ」は、いろんな商品が載っています。

写真付きです。

眺めるだけで、「こんなのがあるんだ!」「あっ、このナットの形状見たことがある、こんな名前がついてたんだ!」などと、新しい発見が、いっぱいあります。


「おすすめできない」かもしれないけど、おすすめしたい

わたしは、ホームセンターの「ねじ」コーナーにいくと、買いもしないのに長居してしまうタイプです。

そうじゃないタイプの人には、この「ねじ総合カタログ」は、つまらない読み物かもしれません、、、。そんな人には「おすすめできない」かもしれないです。

ですが、「ねじ総合カタログ」をきっかけに、ねじの世界に足を踏み入れてみたら、きっと面白いと思いますよ!

周りを見渡してみてください、「ねじ」は身近に、いっぱいあります。

この世界は、「ねじ」で成り立っていると言っても過言ではありません。


おすすめできないかもしれないけど、おすすめしたい、「ねじ総合カタログ」は、そんな本です。


それでは、また。

構造屋の構造屋による、構造屋の為の交流会

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2024/04/10

木造の耐力壁の剛性 1/150rad

昨日のブログの投稿(rad(ラジアン)は、とっても便利なツール)で、「木造の耐力壁の剛性は1/150radを頭打ちに設定されています。」という風に取り上げました。


グレー本では、筋かい耐力壁や面材耐力壁は、1/150rad(木ずりや土壁は、1/120rad)とみなして良い、ということになっています。


鉄骨造や、RC造は、個々に剛性を算出するのですが、木造は、ちょっと特殊のようです。


なぜ、1/150radとみなして良いのでしょう?


告示による耐力壁は、全て実物大の実験データを基に算出されています。

グレー本に、その実験データの資料が記載されています。


ちょっと、グレー本の実験データを読み解いてみましょう!

グレー本の実験データを簡単に説明すると、

実験で、実際の耐力壁に力を加えていき、下の順で耐力のデータを取ります。

降伏耐力⇒終局耐力⇒最大耐力

耐力壁の変形角が1/150radになるときの耐力壁のデータも取ります。

また、各耐力時の時の変形角のデータも取ります。

実験は、耐力壁の耐力と変形角のデータを取ることが目的です。



さて、実験データより、下の4つの数値を導き出すことができます。

① 降伏耐力

② 終局耐力x0.2√2μ-1

③ 最大耐力x2/3

④ 1/150radの時の耐力


①~➃の数値の内、一番小さい値を、その耐力壁の耐力として採用します。

それが、告示の耐力壁の壁倍率の基になっています。


では、グレー本に載っている耐力壁の実験データから、各耐力壁が①~➃のどの値を採用しているのか、ちょっと確認してみましょう!


構造用合板(大壁)   ⇒降伏耐力

構造用合板(真壁)   ⇒終局耐力x0.2√2μ-1

せっこうボード     ⇒ 降伏耐力

筋かい(15x90)    ⇒1/150radの時の耐力

筋かい圧縮(30x90)   ⇒終局耐力x0.2√2μ-1

筋かい引張(30x90)     ⇒1/150radの時の耐力

筋かい圧縮(45x90)     ⇒終局耐力x0.2√2μ-1

筋かい引張(45x90)     ⇒1/150radの時の耐力


全ての耐力壁は、1/150radの時の耐力、もしくは1/150radの時の耐力より小さい値になります。



木造の耐力壁の剛性が、1/150radを頭打ちに設定されている理由

厳密には、面材耐力壁などは、1/150radの時の耐力ではないが、1/150rad時の耐力よりも小さい値を採用しているので、ざっくりと木造の剛性を1/150radとしている、ということのようです。

グレー本の実験データを眺めていると、終局時の変形角・変形量が、結構大きくて耐力壁の種類にもよりますが、10cm前後まで行ってしまいます。怖いですね、、。

また、実験データには、どうやって壊れたかの破壊状況も写真が載っています。そういった部分も眺めていると、それが頭にこびりついて、後々、実際の設計の時の糧になったりしてます。

なので、わたしは、こういう実験データの資料を見るのが、けっこう好きです。

みなさんも、どうですか?おもしろいですよ、実験データ。

それでは、また。


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2024/04/09

rad(ラジアン)は、とっても便利なツール

構造屋をしていると、rad(ラジアン)を、よく使います。

radは、弧度法の角度の単位です。

1radを度数法に変換すると、 約57.2958度になります。


弧度法?度数法?

う~ん、なんだかよく分からないですね。

よく分からないけど、rad(ラジアン)は、とっても便利なツールなのは確かです。



実際に、使ってみるとわかります。とりあえず、使ってみましょう!


例として、分かりやすい木造を例に上げます。

木造の耐力壁の剛性は1/150radを頭打ちに設定されています。

つまり、検定比=1.00のとき、建物の変形角は1/150radになります。

実にシンプルです。

この時、「建物の変形量を知りたい!」と思ったとします。

知りたいと思わなくても、思ってください。

どうすれば、変形量を出せるんでしょう?

簡単です。

「高さx1/150rad」とするだけです。

高さが3,000mmなら、3,000㎜x1/150rad=20㎜、変形量は20㎜です。




じゃ、検定比=0.50にときはどうでしょう?

変形角度は1/300radになります。

変形量は、高さが3,000mmなら、

3,000㎜x0.5x1/150rad ⇒ 3,000㎜x1/300rad=10㎜となります。



検定比と高さが分かっていれば、簡単な計算で建物の変形量が分かります。

電卓でたたくとすれば、検定比x高さ÷150、とすれば良いわけです。

rad(ラジアン)は、とっても便利なツールなのが、お分かりいただけたでしょうか?


建物の変形量が分かったところで、それが何? って思う人もいますよね。

そこは、想像力を働かせて下さい。

地震の揺れで、建物の傾きが1cmなのか、10cmなのかで全然違います。

耐震性能ばかりに目がいきがちですが、天井材や外装材が剥落して、人を傷付けることもありますし、家具の転倒で逃げ遅れてしまう人もいます。出入口のドアが変形で開かなくなれば、逃げ道がなくなります。

建物の変形量は小さいに越したことはありません。

建築基準法には「変形は1/200以下にせよ」との規定もあります。

耐震性能だけを満たすだけでなく、建物の変形量にも配慮するべし、という事です。



では、とっても便利なrad(ラジアン)について、もう少し深堀りしてみましょう!


「rad(ラジアン)」というのは、極論を言うと、ただの単位です。

単位というのは、センチ、インチ、尺、リットル、、、などのことです。

1センチ

1インチ

1尺

1リットル

1ラジアン(1rad)

という、使い方です。


1rad(ラジアン)が単位?って言われても、しっくりこないというか、漠然としてます。


ここで、思い切って、一度ラジアンは忘れてしまいましょう。

急がば回れです。ラジアンは忘れて、「尺」という単位について、考えてみて下さい。

日本の尺を知らない、外国人に、1尺をどう伝えますか?

1尺=30.3㎝

って、伝えればよさそうです。

逆に、1フィートとか、1インチとか、日本人には馴染みがないので、どのくらいかなのか、直感的に理解できないです。


rad(ラジアン)という単位も、ようは、馴染みがないだけです。

外国人が1尺を直感的に分からないのと同じで、「1rad」も直感的に分からないだけです。

だったら、1尺=30.3㎝のように直感的に分かる単位になおしてみましょう。


rad(ラジアン)は弧度法です。

それを、馴染みのある度数法に変換すると、1rad=約57.2958度になります。


1rad(ラジアン)が、57.2958度? 

ずいぶん、中途半端な数値です。

1rad から、度数に変換する式は、1rad = 180度 / π です。

この π は、パイです。
パイとは、3.141592...のこと、つまり円周とか求めるときに使うやつです。

1rad = 180度 ÷ 3.141592 = 約57.2958度


ということで、1rad(ラジアン)は弧度法による角度の単位で、度数法で言えば約57.2958度ということが分かりました。


いや、いや、どういうことよ?、なんで、パイがでてくるの?意味がわからない!

そもそも、なんで弧度法なんて、使うわけ!?

おっしゃるとおり、もう一歩、踏み込んで、考えないと、納得できそうにありません。



では、もう一歩、踏み込んで、考えてみましょう!

もう一歩、踏み込んで考えるために、ちょっと、回り道しましょう。

下の絵のように、弧の長さが半径と同じ場合の時、角度はいくつになるのか?


では、求めてみましょう。

360度 :?度 = 2πr : r

?度 x 2πr  =  360度 x r

    ?度   =  360度 x r ÷ 2πr

    ?度 =  360度 ÷ 2π

    ?度 =  180度 ÷ π  

    ?度 = 180度 ÷ 3.14159

    ?度 = 57.2958度


つまり、1rad(ラジアン)というのは、弧と半径が同じ長さの時の角度を、「1」とするという単位になります。


なんで、こんな単位をつかうのか?

rad(ラジアン)が、とっても便利なツールな理由は、ここにあります。

一番最初に、木造の変形量を求めました。

今度は、rad(ラジアン)を使わずに、変形量を求めてみましょう。



rad(ラジアン)を使わないので、一旦、1/150radを度数法に戻しましょう。

1rad=57.2958度なので、1/150radは、57.2958度の150分の1になります。

57.2958 ÷ 150 = 約0.38度




半径rを高さに置き換えます。

円周は、2πr ⇒ 2π x 高さ、とします。


そうすると変形量は、

変形量 : 2π x 高さ = 0.38度 : 360度

      変形量 x 360度  = 0.38度 x 2π x 高さ

      変形量  = 0.38度 x 2π x 高さ ÷ 360度  ・・・①式


ここで、高さを3,000㎜とすると、変形量は20㎜になります。

変形量 = 0.38度 x 2π x 3,000㎜ ÷360度 = 約20㎜


ラジアンで求めた場合も、やはり20㎜になります。

変形量 = 高さ x 1/150rad = 3,000㎜ ÷ 150 = 20㎜


ちょっと戻って①式を、いじってみましょう。

変形量  = 0.38度 x 2π x 高さ ÷ 360度  ・・・①式

①式を並び替えてみる、

変形量    = 高さ x 0.38度 x 2π ÷ 360度  ・・・①式

水色の部分は、2π ÷ 360度 ⇒ π/180度 とすることもできます。

そうすると①式は、下のようになります。

変形量    = 高さ x 0.38度 x n/180度   ・・・②式


おや?これは、1rad(ラジアン)を度数法に変換する式の逆数ですよ~

1rad = 180度/π


1/150rad を度数に変換するとき、

1rad = 180度/π

1rad = 57.2958度

57.2958度 ÷ 150 = 0.38度

としました。


逆に、今度は0.38度を弧度法に変換するには、逆のことをすればいいので、

0.38度  ÷ 1rad  ⇒ 0.38度 ÷ (180度/π)

 0.38度 x (π/180度) = 1/150  ・・・③式

となります。


①式を変形したのが②式に、その②式に③式を代入すると

①式・・・変形量    = 高さ x 0.38度 x 2π ÷ 360度

②式・・・変形量    = 高さ x 0.38度 x n/180度

③式・・・0.38度 x (π/180度) = 1/150


②式に③式を代入 ⇒ 変形量 = 高さ x 1/150

おっと、出ましたね!


rad(ラジアン)のからくりが、お分かりいただけたでしょうか?


度数法を使って、変形量をだそうとすると、

変形量  = 0.38度 x 2π x 高さ ÷ 360度 

こんな感じで、面倒です。


ですが、弧度法(ラジアン)を使って、変形量を出すときは、

変形量 = 高さ x 1/150

すっごく、簡単になります。


建物の変形量を出すときに、

rad(ラジアン)は、とっても便利なツールです。


別に、ラジアンのからくりが、分からなくても、困りませんが、知っておいて損はないです。一度、流れをさらっておくと、いいですよ~。

それでは、また。

2024/04/08

オールアンカー

鉄骨階段の露出柱脚のアンカーボルトをオールアンカーに変更したいという相談がきた。

オールアンカーとは、金属系のあと施工アンカーのことだ。




まぁ、先埋め込みアンカーは、精度が悪ければ台直しが必要になったりする欠点がある。
あと施工アンカーは、そういう心配がいらないし、接着系より手軽な金属系を、現場が使いたがる気持ちは分からなくもない。



個人的には、普通に先埋め込みアンカーボルトを使って欲しい、それが駄目なら接着系のあと施工アンカーがベターなんだけど、、、。



ただ、2階に行くだけのササラのアンカーだし、そんなに、こだわる必要性もない。引張は生じないし。


しかし、やるのはいいけど、変更したら、金属系あと施工アンカーの検討書の作成しなくちゃいけないなぁ~と思いつつ



「はい、変更しても良いですが、行政によっては、新築のあと施工アンカーは認めてないところもあるので、確認されてみたほうがいいと思いますよ」

とだけ回答しておいた。


もともと、新築では、あと施工アンカーはNGだ。
何年か前に、それが法改正でOKに変わった。
使い方は、限定されているようだが。


なので、恐らく行政側がまだ対応できていないから、あと施工アンカーの使用は認めないだろうなぁと思っていた。


その後、連絡が来て、案の定、行政側の許可が出なかったので、諦めますと連絡がきた。




個人的には、金属系アンカー使ってもいいんじゃないかなと思ったが、行政判断なので仕方ない。


でも、もし4本足の自立型の階段で、同じようにオールアンカーにしたいと相談されたら、わたしは、変更はできないと答えると思う。


物によっては、オールアンカー行けるけど、行けないこともある。
この区別は、構造屋さんにしか判断できない。

一度、オールアンカーで良いとしてしまえば、現場が勝手に、オールアンカーにしては駄目なところもやってしまう可能性が出てきてしまう。



ならば、新築にあと施工アンカーを認めないというのは、考えて見れば、それはそれで正解なのかも知れない。



計算上でより安全と判断したものが、必ずしも現場でその通りになるとは限らない。


精度が悪い先埋め込みアンカーを思いっきり叩いて台直しした場合と、金属系をしっかりと施工した場合、どちらがいいのか?



計算上は耐力が低くても、安定した施工を望む事ができるのであれば、むしろそちらのほうが、より安全と言えるかもしれない。


一番いいのは、計算上でも良くて、しっかりとした施工が行われるのが、理想です。


ですが、不確定要素は、なくならないもんです。




構造計算で耐震、耐震って、言われてますけど、計算よりも前に、こういう不確定要素をほったらかしにしてる方が問題な気がします。




2024/04/07

構造屋の本棚 鉄骨造 「建築構造用アンカーボルトを用いた露出柱脚設計施工指針・同解説」

もっと、露出柱脚のことを知ろう!


紹介している本:「建築構造用アンカーボルトを用いた露出柱脚設計施工指針・同解説」改訂版2011年



1995年の阪神淡路大震災(兵庫県南部地震)で、露出柱脚のアンカーボルトの破断が原因となる被害が問題視され、露出柱脚の設計は、ピンではなく、バネ(回転剛性を考慮する)とすべし、となったのは、周知の事実です。


そのため、ひと昔前のアンカーボルトを埋め込めんでれば良い納まりは、許されなくなりました。回転剛性を考慮した設計法も、一筋縄にはいきません。

ありがたいことに、認定工法のベースパックやハイベースを採用すれば、そんな煩わしいことから解放されます。


ですが、認定工法頼りで、いいんでしょうか?
わたしたち構造屋は、技術屋でもありますよね?
技術屋が、認定工法頼りって、ちょっと恥ずかしいです。


もっと露出柱脚について、知りたくありませんか?


そんな構造屋さんに、おすすめの本が、この本です。

この本の、いいところは、施工に関してページを大幅に使っているところです。

露出柱脚は、納まりが複雑になるうえに、施工手順も重要になってきます。
施工を知っておくのは、とても大事です。


あっ、でも、既製品を使うなと言ってるわけではないですよ。既製品以外のオーダー品でやると、大体、施工で失敗しがちです。実設計は、既製品を使いましょう!


目次をメモしておきます。参考にしてください。

第1章 総則
1.1 適用範囲
1.2 用語
1.3 適用図書
第2章 材料
2.1 アンカーボルトセット
2.2 その他の鋼材
2.3 コンクリートおよびベースモルタル
第3章 柱脚部の力学特性と設計の考え方
3.1 柱脚部の力学特性
3.2 設計の考え方
3.3 露出柱脚の地震被害と大地震後の補修
第4章 柱脚の構造設計
4.1 構造規定
4.2 設計の基本方針
4.3 回転剛性
4.4 アンカーボルトの耐力
4.5 許容応力度の検討
4.6 柱脚の全塑性曲げ耐力
4.7 柱脚の最大せん断耐力の検討
第5章 施工
5.1 総則
5.2 技術者・技能者等
5.3 柱脚工事施工の基本
5.4 基礎コンクリート打設までの工事管理者への依頼事項
5.5 柱脚工事の施工作業前の打合せ
5.6 柱脚工事の施工作業前の準備
5.7 アンカーフレームの設置作業
5.8 アンカーフレーム設置後の確認
5.9 基礎コンクリート打設前の確認
5.10 基礎コンクリート打設後の工事管理者への依頼事項
5.11 ベースモルタルの充填
5.12 アンカーボルトの締付け
5.13 報告
 付表1 柱脚工事関係者の分担する作業内容一覧
 付表2 柱脚工事管理項目・基準一覧
 付録1 柱脚工事に関する施工条件打合せ議事録
 付録2 施工範囲確認書
 付録3 アンカーフレーム及び設置架台の詳細図
 付録4 アンカーフレーム施工前チェック・完了報告書
 付録5 アンカーボルト設置施工精度チェックシート
 付録6 アンカーボルト最終設置精度チェックシート
 付録7 モルタル注入・ボルト本締め工事施工チェックシート・完了報告書 
設計例1 3階建て事務所ビル
設計例2 平屋建て倉庫
設計例3 中小規模空間構造建築物に関するケーススタディ

では、また。


「構造屋の本棚 RC造」のバックナンバー

・建築携帯ブック コンクリート


「構造屋の本棚 鉄骨造」のバックナンバー

・建築溶接問答

・マンガでわかる溶接作業

 

「構造屋の本棚 木造」のバックナンバー

・住宅と木材 機関誌

・日本建築構造改良法

・鉄骨木造併用構造 設計施工指針

・木造サッシ 標準規格寸法

 

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2024/04/06

ピアノの床補強は必要か ぶっちゃけシリーズvo.8

 『ぶっちゃけ、みんな、どうしてる?』vol.8


   ピアノの床補強は必要か   

※どこ探しても参考例が無い、聞く相手もいない、自分の頭で考えてひねり出す、それが日常茶飯事、構造屋の仕事です。そんなこんなで、自己流でやってるけど、ほんとは合っているのか不安だ、、、。
『ぶっちゃけ、みんな、どうしてる?』シリーズでは、みんなが自己流でやってそうなトピックを取り上げてます。稚拙を暴露する恥を忍んで、私の自己流を載せてます。
ぜひ、みなさんも自己流を、コメントにお寄せ下さい。



■ピアノの床補強は必要か■

前回の「ぶっちゃけ、みんな、どうしている? vol.7  大引の下まくり」は、支持物がない土台に両側から大引が乗っかってくるときは、下まくりにする?という、話をしました。


今回は、「ピアノの床補強は必要か」についてです。


新しい案件の依頼が来ました。意匠図のリビングの隅に「ピアノ」って書いてあります。

わたしは、そういう時には、問答無用で、補強材+床束をバリバリ入れちゃいます。



意匠屋さんは、「ここまで必要?」って顔するんですが、構造屋のわたしも、実のところ、ここまでする必要があるのか、わからんです。でも、やっちゃいます。


ピアノが重いからって、補強するなら、冷蔵庫なんかも、けっこう重いし、本棚も重い。

それだったら、冷蔵庫の下も補強するの? 本棚の下も補強するの?


いやいや、ピアノが重いから、補強してるわけじゃないんですよ?

ピアノのペダルの踏み込みの繰り返しの衝撃荷重。

構造屋としては、あれが怖いんですよ。

繰り返される、衝撃荷重、、、。

繰り返しの衝撃荷重、、、。

いやな予感しか、しない。



わたしは、気が小さいので、「万が一でも障害がでるかも」と思うと、転ばぬ先の杖で、バリバリに補強してしまいます。

家を建てちゃった後、何らかの障害が出てから補強工事する費用を思えば、建てる時に最初から補強しておいた方が費用は安くすむので、まぁ、やらないよりも、やった方がいいくらいの感じなのですが、、、。


やり過ぎかなぁ~?

構造屋のみなさん、どう思います?


次回は、「ぶっちゃけ、みんな、どうしてる?vol.9 玄関框の土台」です。


他の『ぶっちゃけ、みんな、どうしている』シリーズも、見てね。


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2024/04/05

構造屋の本棚 RC造 「マンガで学ぶ コンクリートの品質・施工管理」

はじめてのコンクリート受入検査、この本、おすすめです!


紹介している本:「マンガで学ぶ コンクリートの品質・施工管理」2016年

※下の写真は改訂1版ですが、現在(2024年時点)は2016年発行の改訂2版が最新です。




生コン打設は、時間勝負です。どんどん固まっていきますからね。

なので、現場の職人さんは、コンクリート打設前は、ピリピリしています。


構造屋さんが、コンクリートの受入検査で「OK」を出さないと、コンクリートを打設することができません。


そんな時に、監理者である構造屋さんが、コンクリート受入検査で、手間取っていたり、わけの分からん難癖をつけて時間をかけていると、現場の職人さんに白い目で見られます。


そうは言っても、コンクリートの受入検査は、チェック事項がたくさんあるので、大変です。。。


納入書、外気温、コンクリートの温度、空気量、塩分量、スランプ、スランプフロー

はぁ、、いっぱい、あります。。


はじめてコンクリート受入検査の監理業務をするときは、この「マンガで学ぶ コンクリートの品質・施工管理」の本で予習しておくといいですよ。


施工者向けに書かれているのですが、コンクリートの事をすごく知ることができるので、構造屋さんも勉強になる本です。


意匠屋さんも、図面屋さんも、「コンクリートの施工のことはコンクリート屋さんにまかせればいい、良く分からないし、直接関係ないから」などと言わず、知る努力をしてみては、いかがですか?

意外と、「知る」って面白いですよ~。


では、また。



「構造屋の本棚 RC造」のバックナンバーです。


「構造屋の本棚」は鉄骨造版もあるよ。

・建築溶接問答

・マンガでわかる溶接作業

「構造屋の本棚」は木造造版もあるよ。

・住宅と木材 機関誌

・日本建築構造改良法

・鉄骨木造併用構造 設計施工指針

・木造サッシ 標準規格寸法

 

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2024/04/04

構造屋の本棚 RC造 「建築携帯ブック コンクリート」


紹介している本:「建築携帯ブック コンクリート」2019年

※下の写真は改訂2版ですが、現在(2024年時点)は2019年発行の改訂3版が最新です。




携帯ブックと銘をうっているだけあって、現場での携帯に便利な、178x92、コンパクトサイズです。

まぁ、手のひらサイズですが、、、ポケットに入れたら飛び出ます、、。


この本は、施工者向けです。

この本の編者名が「現場を応援する会」になってますからね😆

実際のコンクリート工事で、若手技術者が知っておくべき、コンクリート工事のあれこれが、全て網羅されています。

「建築携帯ブック」はシリーズになっていて、いろいろありますので、チェックしてみてください。



施工技術者向けのこの本を、構造屋さんが、読むメリットは、3つあります。

1.コンクリート工事の施工を知ることができる。

2.監理業務の立会い検査での予備知識が得られる。

3.この本に載っている、「JASS5の新旧対象表」で、サクッとJASS5の改訂をチェックできる。


この本の「JASS5の新旧対照表」は、おすすめです。

本家の日本建築学会のJASS5の本は、おそるべき厚さです。もう、手に持つだけで、手首をやられそうです。

「そういえば、この部分JASSの改訂あったよな~、どうだったけ?」なんて思って、本家のJASS5から探そうとすると、それはそれは大変です。

その点、この「建築携帯ブック コンクリート」の本は、サクッと「JASS5の新旧対象表」でチェックできるので、助かります。



わたくしごとですが、昔、勤めていた会社は、監理業務の立会い検査に、右も左も分からないペーペーを、一人で現場に送り込む、スパルタな会社でした。

やさしい先輩が、見かねて、教えてくれた本が「建築携帯ブック コンクリート」です。

新人時代、この本には、ほんとうに助けられました。

な~んにも知らない新人構造屋さんが、コンクリート工事や立会い検査を知ろうと思うと、意外と資料がないものです。この本は、そんな新人構造屋さんに、ぴったりです。

中堅構造屋のわたしは、今でも、この本を愛用してます。

一冊お手元に置いておくと、良いですよ~。


では、また。


「構造屋の本棚」は鉄骨造版もあるよ。

・建築溶接問答

・マンガでわかる溶接作業

「構造屋の本棚」は木造造版もあるよ。

・住宅と木材 機関誌

・日本建築構造改良法

・鉄骨木造併用構造 設計施工指針

・木造サッシ 標準規格寸法

 

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2024/04/03

大引の下まくり ぶっちゃけシリーズvol.7

 『ぶっちゃけ、みんな、どうしてる?』vol.7


   大引の下まくり   

※どこ探しても参考例が無い、聞く相手もいない、自分の頭で考えてひねり出す、それが日常茶飯事、構造屋の仕事です。そんなこんなで、自己流でやってるけど、ほんとは合っているのか不安だ、、、。
『ぶっちゃけ、みんな、どうしてる?』シリーズでは、みんなが自己流でやってそうなトピックを取り上げてます。稚拙を暴露する恥を忍んで、私の自己流を載せてます。
ぜひ、みなさんも自己流を、コメントにお寄せ下さい。



■大引の下まくり■

前回の「ぶっちゃけ、みんな、どうしている? vol.6  間崩れとアンカーボルト」は、間崩れで干渉があるときに、アンカーボルトをずらすか?という、話をしました。


今回は、「大引の下まくり」についてです。


下の絵のように、人通口部分の土台に両側から大引がのる場合





下の絵のように、土台下端が15㎜しか残らない。大引からの応力が、15㎜x15㎜しかないところに作用すると思うと、落ちるんじゃないかと、怖くなる。




なので、下の絵のように、「下まくり30」と図示するように、している。そうすると、15㎜x45㎜になるので、まだ、ましになる。






土台に両側から大引が乗っかって、土台に基礎や床束などの支持物が無いときは、「落ちませんよ~に~」と願いを込めて、「大引の下まくり」を図面に図示するようにしてます。


土台の下端残しを、15㎜から45㎜に性能UPさせたところで、水濡れなどあれば、あっちゅうまに不具合が出そうな気もします。そうなれば、床鳴りなどのクレームが来ちゃいそうです。怖い。


一番いいのは、土台の下に基礎や床束の支持物が無いときは、その上に大引を乗せないことなのは、分かっちゃいるのですが、そうもできないときもあるので、、、。


いつまでも、長く住んでいられる良いお家であって欲しいと、願って設計していますが、、、難しいです。

実務のお家が、教科書のような綺麗な間取りのお家だったら、どんなにいいでしょう。

でも、そんなこと言っても仕方ない。

なので、なにかしら苦肉の策の工夫をひねり出します。

不具合が出るかもしれないから、頑張って納まりで回避しようと頑張ってはいますが、

なかなか、パーフェクトに、とはいきませんね。妥協の連続です。


木造の構造屋さん! こんな時は、こんな風にしてるよ! なんて、いいアイデアあったら教えてください!! コメントお待ちしております。



次回は、「ぶっちゃけ、みんな、どうしてる?vol.8 ピアノの床補強は必要か」です。



他の『ぶっちゃけ、みんな、どうしている』シリーズも、見てね。

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2024/04/02

構造屋の本棚 鉄骨造 「建築用ターンバックル筋かい設計施工指針・同解説」


紹介している本:「建築用ターンバックル 筋交設計施工指針・同解説」2005年

※現在は在庫がないようですが、コピー本が3300円で売られています。




社団法人 日本鋼構造協会からでている、ターンバックルの規格書です。


構造詳細図で、ターンバックルの詳細をかくときに、実際の形状や寸法が分からないので困ることがあります。特に、胴(真ん中の輪っか)、羽子板部分などが、謎です。

適当にかいてもいいんですが、知らなくてかくと、「もやっ」として、気持ち悪いです。

形状や寸法などについては、JIS規格を検索して確認すればいいのですが、この「建築用ターンバックル筋交設計施工指針・同解説」の規格書に、きちんと整理されて掲載されているので、非常に助かります。


また、形状や寸法などの規格以外にも、構造設計・計算例、施工についても、丁寧に解説されている良書です。


この本の冒頭に、短い言葉で、筋かいの構造設計の目的が示されています。この冒頭の部分の的確かつ明快な「表現の仕方」が、個人的に好きです。

以下、冒頭部分の抜粋です↓

「鉄骨造接合部の設計においては、大地震時に脆性破壊させないことを目標に、いわゆる保有耐力接合設計によることを前提とし、母材に対する接合部耐力の余裕をもたせることにしています。とくに筋かい構造の場合には、靱性型の設計ルート3のみならず設計ルート2や強度型の設計ルート1においても、筋交の接合部は保有耐力接合とすることが義務付けられています。
 兵庫県南部地震では、この保有耐力接合設計された溶接部が破断するという被害が見られたことから、靱性変形能力の観点から不確定要素の多い溶接接合においては、保有耐力接合からさらに、溶接接合の材料・施工の見直しを含めた、はり・・・・・」


以下が、目次になります。

1章 総則
1.1 適用範囲
1.2 用語
2章 材料
2.1 総則
2.2 建築用ターンバックルの構成と呼称
2.3 建築用ターンバックル胴
2.4 建築用ターンバックルボルト
3章 構造設計
3.1 構造計画
3.2 構造計算
4章 施工
4.1 建築用ターンバックルの取扱い
4.2 建築用ターンバックル筋かいの締込み

設計例
1.はじめに
2.一般事項
3.設計方針
4.筋かい構面の設計
5.梁間架構の計算
6.柱脚の計算

付録

では、また。


「構造屋の本棚 鉄骨造」のバックナンバーも見てね。

・建築溶接問答

・マンガでわかる溶接作業

「構造屋の本棚」は木造版もあるよ。

・住宅と木材 機関誌

・日本建築構造改良法

・鉄骨木造併用構造 設計施工指針

・木造サッシ 標準規格寸法

 

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2024/04/01

間崩れとアンカーボルト ぶっちゃけシリーズvol.6

『ぶっちゃけ、みんな、どうしてる?』vol.6


   間崩れとアンカーボルト   

※どこ探しても参考例が無い、聞く相手もいない、自分の頭で考えてひねり出す、それが日常茶飯事、構造屋の仕事です。そんなこんなで、自己流でやってるけど、ほんとは合っているのか不安だ、、、。
『ぶっちゃけ、みんな、どうしてる?』シリーズでは、みんなが自己流でやってそうなトピックを取り上げてます。稚拙を暴露する恥を忍んで、私の自己流を載せてます。
ぜひ、みなさんも自己流を、コメントにお寄せ下さい。



■間崩れとアンカーボルト■

前回の「ぶっちゃけ、みんな、どうしている? vol.5  土台継手のメス伸び240㎜」は、メス伸びをどのくらい柱から持ち出すのか?という、話をしました。


今回は、「間崩れとアンカーボルト」についてです。


下の例のように、間崩れがあると、アンカーボルトが干渉してしまうときがあります。



みなさんは、こんな時、どうしてますか?


えっ?   そんなの気にしなくてもいい?


そうなんですけど、やっぱり、なんか気持ち悪いじゃないですか~。

↓こんな感じになっちゃうと、やっぱり、どうかなって、思うんですよ。



だから、わたしは、アンカーボルトと干渉しないように、アンカーボルト位置をずらして、寸法を書き込んでおくようにしてます。



こんな風に、いちいちですね、気にしてたら、図面をかく手間がかかって仕方ないんです。

どんどん時間なくなって、夜遅くまで、「ヒー、終わらん」ってこともあるわけですよ。

でも、やっぱり、間崩れがあるとアンカーボルトとの干渉、チェックしちゃいます。

なんか、気持ち悪いんですよね~。


次回は、「ぶっちゃけ、みんな、どうしてる?vol.7  大引の下まくり」です。


過去の『ぶっちゃけ、みんな、どうしている』シリーズも、見てね。

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