rad(ラジアン)は、とっても便利なツール
構造屋をしていると、rad(ラジアン)を、よく使います。
radは、弧度法の角度の単位です。
1radを度数法に変換すると、 約57.2958度になります。
弧度法?度数法?
う~ん、なんだかよく分からないですね。
よく分からないけど、rad(ラジアン)は、とっても便利なツールなのは確かです。
実際に、使ってみるとわかります。とりあえず、使ってみましょう!
例として、分かりやすい木造を例に上げます。
木造の耐力壁の剛性は1/150radを頭打ちに設定されています。
つまり、検定比=1.00のとき、建物の変形角は1/150radになります。
実にシンプルです。
この時、「建物の変形量を知りたい!」と思ったとします。
知りたいと思わなくても、思ってください。
どうすれば、変形量を出せるんでしょう?
簡単です。
「高さx1/150rad」とするだけです。
高さが3,000mmなら、3,000㎜x1/150rad=20㎜、変形量は20㎜です。
じゃ、検定比=0.50にときはどうでしょう?
変形角度は1/300radになります。
変形量は、高さが3,000mmなら、
3,000㎜x0.5x1/150rad ⇒ 3,000㎜x1/300rad=10㎜となります。
検定比と高さが分かっていれば、簡単な計算で建物の変形量が分かります。
電卓でたたくとすれば、検定比x高さ÷150、とすれば良いわけです。
rad(ラジアン)は、とっても便利なツールなのが、お分かりいただけたでしょうか?
建物の変形量が分かったところで、それが何? って思う人もいますよね。
そこは、想像力を働かせて下さい。
地震の揺れで、建物の傾きが1cmなのか、10cmなのかで全然違います。
耐震性能ばかりに目がいきがちですが、天井材や外装材が剥落して、人を傷付けることもありますし、家具の転倒で逃げ遅れてしまう人もいます。出入口のドアが変形で開かなくなれば、逃げ道がなくなります。
建物の変形量は小さいに越したことはありません。
建築基準法には「変形は1/200以下にせよ」との規定もあります。
耐震性能だけを満たすだけでなく、建物の変形量にも配慮するべし、という事です。
では、とっても便利なrad(ラジアン)について、もう少し深堀りしてみましょう!
「rad(ラジアン)」というのは、極論を言うと、ただの単位です。
単位というのは、センチ、インチ、尺、リットル、、、などのことです。
1センチ
1インチ
1尺
1リットル
1ラジアン(1rad)
という、使い方です。
1rad(ラジアン)が単位?って言われても、しっくりこないというか、漠然としてます。
ここで、思い切って、一度ラジアンは忘れてしまいましょう。
急がば回れです。ラジアンは忘れて、「尺」という単位について、考えてみて下さい。
日本の尺を知らない、外国人に、1尺をどう伝えますか?
1尺=30.3㎝
って、伝えればよさそうです。
逆に、1フィートとか、1インチとか、日本人には馴染みがないので、どのくらいかなのか、直感的に理解できないです。
rad(ラジアン)という単位も、ようは、馴染みがないだけです。
外国人が1尺を直感的に分からないのと同じで、「1rad」も直感的に分からないだけです。
だったら、1尺=30.3㎝のように直感的に分かる単位になおしてみましょう。
rad(ラジアン)は弧度法です。
それを、馴染みのある度数法に変換すると、1rad=約57.2958度になります。
1rad(ラジアン)が、57.2958度?
ずいぶん、中途半端な数値です。
1rad から、度数に変換する式は、1rad = 180度 / π です。
1rad = 180度 ÷ 3.141592 = 約57.2958度
ということで、1rad(ラジアン)は弧度法による角度の単位で、度数法で言えば約57.2958度ということが分かりました。
いや、いや、どういうことよ?、なんで、パイがでてくるの?意味がわからない!
そもそも、なんで弧度法なんて、使うわけ!?
おっしゃるとおり、もう一歩、踏み込んで、考えないと、納得できそうにありません。
では、もう一歩、踏み込んで、考えてみましょう!
もう一歩、踏み込んで考えるために、ちょっと、回り道しましょう。
下の絵のように、弧の長さが半径と同じ場合の時、角度はいくつになるのか?
360度 :?度 = 2πr : r
?度 x 2πr = 360度 x r
?度 = 360度 x r ÷ 2πr
?度 = 360度 ÷ 2π
?度 = 180度 ÷ π
?度 = 180度 ÷ 3.14159
?度 = 57.2958度
つまり、1rad(ラジアン)というのは、弧と半径が同じ長さの時の角度を、「1」とするという単位になります。
なんで、こんな単位をつかうのか?
rad(ラジアン)が、とっても便利なツールな理由は、ここにあります。
一番最初に、木造の変形量を求めました。
今度は、rad(ラジアン)を使わずに、変形量を求めてみましょう。
1rad=57.2958度なので、1/150radは、57.2958度の150分の1になります。
57.2958 ÷ 150 = 約0.38度
円周は、2πr ⇒ 2π x 高さ、とします。
そうすると変形量は、
変形量 : 2π x 高さ = 0.38度 : 360度
変形量 x 360度 = 0.38度 x 2π x 高さ
変形量 = 0.38度 x 2π x 高さ ÷ 360度 ・・・①式
ここで、高さを3,000㎜とすると、変形量は20㎜になります。
変形量 = 0.38度 x 2π x 3,000㎜ ÷360度 = 約20㎜
ラジアンで求めた場合も、やはり20㎜になります。
変形量 = 高さ x 1/150rad = 3,000㎜ ÷ 150 = 20㎜
ちょっと戻って①式を、いじってみましょう。
変形量 = 0.38度 x 2π x 高さ ÷ 360度 ・・・①式
①式を並び替えてみる、
変形量 = 高さ x 0.38度 x 2π ÷ 360度 ・・・①式
水色の部分は、2π ÷ 360度 ⇒ π/180度 とすることもできます。
そうすると①式は、下のようになります。
変形量 = 高さ x 0.38度 x n/180度 ・・・②式
おや?これは、1rad(ラジアン)を度数法に変換する式の逆数ですよ~
1rad = 180度/π
1/150rad を度数に変換するとき、
1rad = 180度/π
1rad = 57.2958度
57.2958度 ÷ 150 = 0.38度
としました。
逆に、今度は0.38度を弧度法に変換するには、逆のことをすればいいので、
0.38度 ÷ 1rad ⇒ 0.38度 ÷ (180度/π)
⇒ 0.38度 x (π/180度) = 1/150 ・・・③式
となります。
①式を変形したのが②式に、その②式に③式を代入すると
①式・・・変形量 = 高さ x 0.38度 x 2π ÷ 360度
②式・・・変形量 = 高さ x 0.38度 x n/180度
③式・・・0.38度 x (π/180度) = 1/150
②式に③式を代入 ⇒ 変形量 = 高さ x 1/150
おっと、出ましたね!
rad(ラジアン)のからくりが、お分かりいただけたでしょうか?
度数法を使って、変形量をだそうとすると、
変形量 = 0.38度 x 2π x 高さ ÷ 360度
こんな感じで、面倒です。
ですが、弧度法(ラジアン)を使って、変形量を出すときは、
変形量 = 高さ x 1/150
すっごく、簡単になります。
建物の変形量を出すときに、
rad(ラジアン)は、とっても便利なツールです。
別に、ラジアンのからくりが、分からなくても、困りませんが、知っておいて損はないです。一度、流れをさらっておくと、いいですよ~。
それでは、また。
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