木造耐震改修 あと施工アンカーは施工が大事

耐震改修では、RC、S、木造、どの構造種別でも、あと施工アンカーが使われています。


今回のブログ記事は、木造耐震改修のあと施工アンカーの施工には十分に気を付けなければならない、という話です。

わたしの失敗談を通して、なぜ、木造の耐震改修では、あと施工アンカーの施工が大事なのかが、わかって頂けたら、嬉しいです。



わたしは、昔、耐震診断・改修をメインにしている構造設計事務所に勤めていました。

公共建築物がメインで、RC造の学校校舎、S造の体育館などが多く、木造の校舎などは案件自体がありませんでした。

それが、たまたま木造の幼稚園の案件がでて、わたしが担当することになりました。



わたしの失敗談というのは、その木造の耐震改修の監理業務での「あと施工アンカー引張試験」立会検査でのことです。



引張試験には、ちぎれるまで引張る「破壊試験」と、所定の強度を確認するまで引張る「非破壊試験」の2つがあります。

「あと施工アンカー引張試験」は、部材を壊さない「非破壊検査」になります。

「あと施工アンカー引張試験」で実際に用いる検査器具は、油圧式加圧装置というものが使われていて、認定資格を持っている技術士が行います。

※あと施工アンカー引張試験については、こちらのサイトが参考になります。↓

https://anchor-tools.jp/examination/anchor-test/oil.html


RC造やS造の耐震改修においては、必ず「あと施工アンカー引張試験」を行います。

木造の耐震改修でも、必ず「あと施工アンカー引張試験」を行うのでしょうか?

その当時、木造の耐震改修といえば、戸建て住宅というのが普通で、旧耐震以前の木造の公共建築物の存在自体がありませんでした。そのため、木造の耐震改修のルール的なものがありません。

つまり、どうすべきかは、誰も知らないのです。

わたしのバカな行動は、ここからすでに始まっていました。

RC造やS造しか経験がなかったので、当然「あと施工アンカー引張試験」を行うべきと判断しました。そして、所定の引張強度の確認をするのが、当然だとも思っていました。



さて、立会い検査当日のことです。

現場には、現場代理人、監理者のわたし、検査の準備にまごついている技術士、3人がそろっていました。

RCやSなら、いざしらず、木造の検査はしたことがない技術士の方は、いつもと勝手が違うので検査装置をセッティングするのに、手間取っていました。

現場代理人も、普通の木造専門の工務店の方で、「あと施工アンカー引張試験」は、初めてです。興味深々で、技術士の様子を眺めています。

検査装置の準備もでき、いよいよ、あと施工アンカーを引っ張ります。

装置は静かなものです、引張られているのかどうかは、装置のゲージの針でしか確認できません。

3人とも、ゲージの針の様子を見ていました。その時です。

ミシ、、ミシ、、ミシ、、

不穏な音がしました。音がする方を見ると、

検査装置の足が、土台にめり込まれていきます。

3人とも、それを目にしましたが、全員、何も言いません。

装置のゲージの針は、所定の強度までは、まだまだ足りません。

土台にめり込もうが、なんだろうが、引っ張るしかないわけです。


技術士の方は、何か言いたげでしたが、黙っています。

現場代理人は、そもそも初めてのことなので、よく状況がわからないが、不穏な音を耳にし、落ち着かない様子です。


わたしは、やばいなと思いつつ、強度が出るまで、土台がもってくれることを祈りつつ、ゲージの針を見つめていました。


ミシ、、ミシ、、ミシ、、、

パシーン!


「とめてくださいっ!ここまででOKです」

強烈な破裂音に、そう言うしかありませんでした。

わたしの言葉に、技術士、現場代理人は、ほっとした様子でした。


幸い目視上は、土台に亀裂などはなかったですが、土台の内部では、どうなっているかは、確認のしようがありません。


あと施工アンカーの所定の強度というのは、アンカーボルト(つまり鉄の強度)をもとに算出します。そのため、土台の圧縮強度よりも、大きいのです。

当然、今回のように引張試験を行えば、アンカーの引張強度の前に土台の圧縮強度の限界を超えてしまい、土台の破壊に至ります。


ちょっと考えてれば、分かることです。

RCやSしか経験のなかったわたしは、そのことに気づく事ができませんでした。何でも、杓子定規に「あと施工アンカー=引張試験」と考えていた、わたしが、バカだったわけです。


そのせいで、非破壊検査で、危うく破壊しそうになりました。


木造の耐震改修では、あと施工アンカーの引張試験はNGというが分かったわけですが、それは、あと施工アンカーの強度を確認することができない、ということを示すわけです。

そうであれば、きちんとした施工がなされることが、なによりも大事になってきます。

きちんとした施工とは、どういったことなのでしょうか?

あと施工アンカーの施工要領の情報は、ネットでもすぐに得ることができます。

構造屋としては、しっかりと、知っていなければならないと、わたしは思います。


~~メモ~~

施工に関しての参考になるサイト

旭化成のカタログ・資料紹介  総合技術資料がおすすめ、個別施工要領でしたらAPを

日本建築あと施工アンカー協会 


~~メモ~~

設計の参考図書は、下の3冊がおすすめです。

・日本建築防災協会 既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準・耐震改修設計指針・同解説

・日本建築学会 各種合成構造設計指針・同解説

・日本建築センター 建築設備耐震設計・施工指針


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