建物を一体にしたいときは、エキスパンション・ジョイントを設けます。
構造的に建物を分離したいときに、エキスパンション・ジョイントを設けます。
・L字になど形状が不整形で、構造的に不利になる場合
・既存の建物を増築する場合
・外部鉄骨階段などの付属建築物などを分離して検討したい場合
などなど、、。
EXP.Jを設ける理由は、さまざまであるが、大体においてその目的は、意匠的には一体として使いたいのでくっつけておきたいが、構造的には一体にしたくない、そんなところである。
なので、建物間には所定のクリアランスを設けて、構造的には分離した建物として検討し、クリアランスにEXP.Jカバーを設けることで、意匠的には1体として使用可能なようにする。
構造屋なら、こんなことは、特段、言われるほどのことではなく、みんな知っている。
構造屋なら、そう、構造屋なら常識、、、構造屋ならね。
しかし、失念してはいけない。
自分(構造屋)にとっての常識が、必ずしも構造屋以外の人にはとっても常識とは限らない。
EXP.Jにまつわる出来事で、
「これは、一本取られたな、たしかにジョイントだよね!」
と、思ったことがある。
今回の話は、そんな出来事の話です。
木造の建物に、軽量鉄骨のバルコニーが付属する。
この付属するバルコニーについて、構造屋さんの意見が聞きたい。
わたしの友人の知人の知人、どこの誰べえさんか、よく知らない人から、相談の電話がきた。
良く知りもしない、わたしにまで、つてを頼って連絡をしてくるのだから、よっぽど困っていらっしゃるようだ。
相談の内容は、確認審査機関から、「バルコニーの検討書を添付してください」と言われたことについてだった。
図面を見てみると、バルコニーに2本柱があって、木造本体にくっついている。なんてことはない、よく見かけるものだ。
検討書をつけろ、というのであれば、その2本の柱の部材検討書をつければ、良いだけのように思われる。
ところが、相談者は、「審査機関から、独立したものとして、検討が必要と言われた」という。
「バルコニーにEXP.Jを設けたのですか?」と尋ねると、「そうだ」と言う。
「それであれば、柱を4本、ブレースなどを設けるとかしないと、構造的には成立しませんよ」内心は、なぜ一体にしないのかという疑問を持ちつつ、そう答えた。
「でも、EXP.Jで接続しているのに、そこまで必要なんでしょうか?」と、明らかに、図面変更をしたくなさそうに、相談者が言う。
「ええ、必要ですね」と答えると、
「もし、そうなら、図面の作成と計算をお願いできますか?」と、相談者は言う。
「はい、大丈夫ですが、図面はこのままにして、本体と一体に計算できないかと、本体の構造屋さんに相談されてみては、どうですか?」と、進言しておいた。
電話なので、相談者の顔は見れない、だけれど、声色的に、「納得いかない」感じが伝わってくる。
それでも「分かりました、ありがとうございます。また、お電話するかも知れません。」
といって、相談者は電話を切った。
その後、その相談者から電話が来なかったので、きっと、なんとかなったのだろう。
この件とは別の話ですが、
木造の本体に鉄骨造が付属する案件の仕事をした時のことです。
木造の部分は、別の構造屋さんが担当していました。
元請さんから
「図面にEXP.Jの表記がありますが、一体ではなく、独立して検討をお願いできませんか?」
とメールが来た。
そのメールを見て、最初は頭がハテナマークになってしまいました。
「EXP.J=一体」と、この人は、言っている。なぜ?
はっ、そうか!
エキスパンションジョイント!
ジョイント!
ジョイントはつなげるだ!
ということは、エキスパンションジョイントとは、建物と建物をつなげるということになる。
なるほど!
だったら、確かにEXP.jは一体ですよね
これは、一本、取られたな!
と、苦笑してしまいました。
そして、以前、相談してきた人が、納得していなそうだったわけが、ようやく理解できました。
相談者はEXP.jを設けて、木造本体とバルコニーを一体にしたつもりだった。だから簡素な作りでも大丈夫なはずと思っていた。
だが、審査機関は、EXP.Jを設けているならバルコニーを独立して計算せよという。
おかしいと思って、構造屋(私)に相談したら、解決するどころか、バルコニーを4本柱にしてブレースもつけろという。
相談者にしてみたら、EXP.j(一体)にしたいのに、思わぬ方向に話が行ってしまう。
どうしてなんだ、、、
と、思ったことだろう。
あのとき、相談者の勘違いに気付いていれば、相談者の悩みは簡単に解決できたはずなのに、解決するどころか、さらに悩まさせてしまっただろう。
非常に、申し訳ないことをしてしまった。
構造屋の構造屋による、構造屋の為の交流会
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