2024/03/24

建物を一体にしたいときは、エキスパンション・ジョイントを設けます。 それは、間違いです。

建物を一体にしたいときは、エキスパンション・ジョイントを設けます。

それは、間違いです。

構造的に建物を分離したいときに、エキスパンション・ジョイントを設けます。

・L字になど形状が不整形で、構造的に不利になる場合

・既存の建物を増築する場合

・外部鉄骨階段などの付属建築物などを分離して検討したい場合

などなど、、。

EXP.Jを設ける理由は、さまざまであるが、大体においてその目的は、意匠的には一体として使いたいのでくっつけておきたいが、構造的には一体にしたくない、そんなところである。

なので、建物間には所定のクリアランスを設けて、構造的には分離した建物として検討し、クリアランスにEXP.Jカバーを設けることで、意匠的には1体として使用可能なようにする。


構造屋なら、こんなことは、特段、言われるほどのことではなく、みんな知っている。

構造屋なら、そう、構造屋なら常識、、、構造屋ならね。

しかし、失念してはいけない。

自分(構造屋)にとっての常識が、必ずしも構造屋以外の人にはとっても常識とは限らない。


EXP.Jにまつわる出来事で、

「これは、一本取られたな、たしかにジョイントだよね!」

と、思ったことがある。

今回の話は、そんな出来事の話です。



木造の建物に、軽量鉄骨のバルコニーが付属する。

この付属するバルコニーについて、構造屋さんの意見が聞きたい。

わたしの友人の知人の知人、どこの誰べえさんか、よく知らない人から、相談の電話がきた。

良く知りもしない、わたしにまで、つてを頼って連絡をしてくるのだから、よっぽど困っていらっしゃるようだ。

相談の内容は、確認審査機関から、「バルコニーの検討書を添付してください」と言われたことについてだった。

図面を見てみると、バルコニーに2本柱があって、木造本体にくっついている。なんてことはない、よく見かけるものだ。

検討書をつけろ、というのであれば、その2本の柱の部材検討書をつければ、良いだけのように思われる。

ところが、相談者は、「審査機関から、独立したものとして、検討が必要と言われた」という。

「バルコニーにEXP.Jを設けたのですか?」と尋ねると、「そうだ」と言う。

「それであれば、柱を4本、ブレースなどを設けるとかしないと、構造的には成立しませんよ」内心は、なぜ一体にしないのかという疑問を持ちつつ、そう答えた。

「でも、EXP.Jで接続しているのに、そこまで必要なんでしょうか?」と、明らかに、図面変更をしたくなさそうに、相談者が言う。

「ええ、必要ですね」と答えると、

「もし、そうなら、図面の作成と計算をお願いできますか?」と、相談者は言う。

「はい、大丈夫ですが、図面はこのままにして、本体と一体に計算できないかと、本体の構造屋さんに相談されてみては、どうですか?」と、進言しておいた。

電話なので、相談者の顔は見れない、だけれど、声色的に、「納得いかない」感じが伝わってくる。

それでも「分かりました、ありがとうございます。また、お電話するかも知れません。」

といって、相談者は電話を切った。

その後、その相談者から電話が来なかったので、きっと、なんとかなったのだろう。



この件とは別の話ですが、

木造の本体に鉄骨造が付属する案件の仕事をした時のことです。

木造の部分は、別の構造屋さんが担当していました。

元請さんから

「図面にEXP.Jの表記がありますが、一体ではなく、独立して検討をお願いできませんか?」

とメールが来た。

そのメールを見て、最初は頭がハテナマークになってしまいました。

「EXP.J=一体」と、この人は、言っている。なぜ?

はっ、そうか!

エキスパンションジョイント!

ジョイント!

ジョイントはつなげるだ!

ということは、エキスパンションジョイントとは、建物と建物をつなげるということになる。

なるほど!

だったら、確かにEXP.jは一体ですよね

これは、一本、取られたな!

と、苦笑してしまいました。



そして、以前、相談してきた人が、納得していなそうだったわけが、ようやく理解できました。


相談者はEXP.jを設けて、木造本体とバルコニーを一体にしたつもりだった。だから簡素な作りでも大丈夫なはずと思っていた。


だが、審査機関は、EXP.Jを設けているならバルコニーを独立して計算せよという。

おかしいと思って、構造屋(私)に相談したら、解決するどころか、バルコニーを4本柱にしてブレースもつけろという。


相談者にしてみたら、EXP.j(一体)にしたいのに、思わぬ方向に話が行ってしまう。

どうしてなんだ、、、

と、思ったことだろう。


あのとき、相談者の勘違いに気付いていれば、相談者の悩みは簡単に解決できたはずなのに、解決するどころか、さらに悩まさせてしまっただろう。

非常に、申し訳ないことをしてしまった。


構造屋の構造屋による、構造屋の為の交流会

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