2024/03/22

木造の通り符号 その2

 木やるなら、そこんとこヨロシク! vol.2

 木造の通り符号 その2

前回の記事では、木造の業界では、人によって違う2種類の「通り符号」の振り方が使われていることを話しました。(前回の記事は、こちらからどうぞ。)

2種類の「通り符号」とは

点を左下に取り、
左から右へ「X1、X2、X3、、、」
下から上へ「Y1、Y2、Y3、、、」


基点を右上に取り
右から左へ 「い、ろ、は、、、」
上から下へ 「一、二、三、、、」



今回の記事では、木造の業界で、人によってなぜ「通り符号」が違うのか、設計側、施工側の立場になって、考えてみます。

・設計側の「通り符号」→ 意匠屋さんの立場から考えてみる
・施工側の「通り符号」→ 大工さんの立場から考えてみる

各々の立場になって考えてみれば、木造の業界で「通り符号」を統一するのが、難しいというのが理解できるようになります。

意匠屋さんの立場から考えてみる(設計側の「通り符号」)


大体の意匠屋さんは、建築系の学校を卒業しています。
学校で学ぶ「通り符号」の振り方は、ご存知の通り、下のようになっています。

点を左下に取り、
左から右へ「X1、X2、X3、、、」
下から上へ「Y1、Y2、Y3、、、」

そのため、意匠屋さんは、疑うことなく「通り符号」を振っています。
(その点は、RCやSの構造屋さんも一緒ですので、充分に理解できると思います。)




話は変わりますが、
工務店さんがお施主さんの窓口になり、意匠屋さんに確認申請などを外部委託する、そんな仕事の流れが、木造業界にはあります。

わたしが取引していた工務店さんは、スタイルの異なる意匠屋さん2人を外部委託先として揃えていて、お施主さんの好みによって、担当する意匠屋さんを変えていました。

そこの工務店の案件の構造に関しては、わたしが全て受けていました。

工務店さんが現場で使っている「通り符号」は、

基点を右上に取り
右から左へ 「い、ろ、は、、、」
上から下へ 「一、二、三、、、」

でした。

ところが、2人の意匠屋さんは

点を左下に取り、
左から右へ「X1、X2、X3、、、」
下から上へ「Y1、Y2、Y3、、、」

のタイプを使います。

一番、困るのは、施工と設計の間にいる、構造屋のわたしです。

毎回、毎回のことに、辟易したわたしは、意匠屋さんに、現場に合わせて「通り符号」を振ってくれるよう、頼みました。

1人の、意匠屋さんは、快く了解してくれました。
もう1人の意匠屋さんは、取り付く島もないもないほど、ピシャリと断られてしまいました。


設計者がである意匠屋さん達の中でも、人によって「通り符号」の振り方への、こだわりが違うのでしょう。

 おそらく、快く現場に合わせて「通り符号」の振り方に替えてくれる意匠屋さんは稀で、学校で学んだ「通り符号」の振り方を、曲げない意匠屋さんの方が普通だと思います。

わたし自身も、構造屋で設計者側なので、その気持ちは分かります。


大工さんの立場から考えてみる(施工側の「通り符号」)


大工さんの使う「通り符号」は、日本語の書き順になっています。

本来の日本語の書き順は、新聞記事のように、上から下へ降りていき、段落は右から左へ移ります。

図面に描く「通り符号」は、起点を右上に取り、右から左へ、「い、ろ、は、、」、上から下へ、「一、二、三、、、 」になります。

元来、大工さんからしたら、これが「通り符号」です。


もう少し、大工さんが使う「通り符号」について、深く考えてみます。

RCやSに比べて、木造は、とにかく部材の数が多いです。

大工さんは、1日で全ての部材を組み上げ、棟上げしてしまいます。(すごいですね!)

時間勝負なので、棟梁は、棟上げの日には、助っ人の大工さんを呼んで、大人数で、作業します。

部材の数が多いうえ、作業する人も多い、そうなれば、いろいろ混乱が起こりそうです。

こっちに、刺すはずの柱が、誰かが間違って、あっちに刺してしまっていて行方不明に、、、「お~い、ここの柱が無いぞ、どこ行った?」なんてことが現場では起こりそうです。

こういったことにならないように、部材の1つ1つには「番付け」がされています。

「番付け」とは、部材である木材に、通り符号を書き込んで、印をつけることを言います。たとえば、い通りの5の柱には、「い五」と、いった風にです。

この印があれば、誰が見ても、部材の正確な配置が分かります。

番付があるので、部材の数が多くても、作業する人数が多くても、大工さん達は、混乱することなく、1日で組み上げることができます。

また、大工さん達の共通認識として、通り符号は「下り方向」に読むというのが、あります。「下り方向」とは、先に言ったように、起点は右上、右から左へ「い、ろ、は、、」上から下へ「一、二、三、、」のことを指します。

みんなが、同じ「下り方向」で、通り符号を認識しているからこそ、現場は混乱せずに済みます。

木造の「部材数が多い」という特徴は、建て方のときにデメリットになりますが、「番付け」することによって、大工さん達は問題解決しているわけです。

大工さん達にとっては、組み上げるための「通り符号」は、必要不可欠なものです。

設計者側にはない、施工側である大工さんの「通り符号」の使い道ですね。


余談になりますが、

ある大工さんに、聞いてみたことがあります。

「現場で使う符号と、設計図が違うと混乱しないのか?」

大工さんの手には、施工図であるプレカット図と設計図が握られています。

プレカット図は大工さんが使う「通り符号」になっています。

その大工さん曰く、

「もらった図面は、全部、書き替えているから、平気ですよ」

とのこと。

大工さんの手にある設計図は、鉛筆で符号が書き直されていました。


大工さんが使う「通り符号」は、親方から弟子へ、受け継がれています。

そのため、熟練になればなるほど、「通り符号」を変えることに、抵抗感を感じるのではないのかと、思います。


結局、木造の業界では「通り符号」がバラバラなのがデフォルト

設計者側には、設計者側の、本筋があり。

施工側には、施工側の、事情がある。

こちらを立てれば、こちらが立たず、です。

なので、当分は、木造の業界では「通り符号」がバラバラなのがデフォルトのままだと思います。

ですが、業界全体では、設計者側が使っている「通り符号」をデフォルトにする流れにあるようです。

大分、時間はかかるでしょうが、木造の業界でも「通り符号」は統一されるかも知れません。


〇おまけ〇

個人的な意見を言わせてもらえば、大工さんに合わせて「通り符号」を統一したらどうかと思っています。今の業界の流れと逆行するので、おそらく無理でしょうが。

ある柱の位置を

「えっくすいちの、わいごの柱」

と耳で聞いた時と、

「い、の、ごの柱」

と聞いた場合では、
大工さんの「通り符号」に軍配が上がります。
他人に、ある位置を伝達する時、アルファベット+数字、アルファベット+数字、よりも、文字+数字の方が、明らかに、伝えやすいし、相手も理解しやすいです。


それに、現場で、柱に刻まれた番付が

「X1-Y5」と「い五」、どちらが、いけてるか?

わたしは、断然「い五」が、いけてると思います。

「日本の建築物、木造!」って感じがします。

建築にロマンを求めちゃいけないでしょうか?


次回は、木造の定尺について、説明します。


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