木造の吹抜け

わたしは、吹抜けが嫌いです。

正確に言うと、「吹抜け」自体が、嫌いなわけじゃないんです。


個人的には、吹抜けのあるお家は、「わぁ、すてき~」と思います。

お家を建てるってことは、一生住むことになる空間を作るわけですから、後悔のないように夢いっぱいの素敵な家にすればいいと、個人的には思います。


大きな吹抜け空間があると、素敵ですよね?

でも、「大きな吹抜けのある素敵な家」と「地震に強い家」は、両立しません。

そこには「吹抜け」と「耐震性」とのトレードオフの問題が存在します。

吹抜けが大きくなればなるほど、耐震性が脅かされることになる。

そのことを、どれくらいのお施主さんが、建築士から説明してもらっているのでしょうか?



最近、知人の意匠屋さんに相談された話です。

床面積1/5くらいの吹抜け空間があり、4隅に火打ちが配置されている意匠図面でした。

初見では、まぁ、大丈夫だろうと思ったのですが。。。


よくよく話を聞くと、2階の床のほとんどに、合板を貼らない計画にすると言います。

2階床梁の上に直接、床仕上げ材の無垢の小幅板を貼る計画にするのだそうです。

その計画には根太さえありません。

合板を貼ってから、その上に小幅板を貼るのでは、ダメなのですか?と問いたら

1階から見上げた時に、2階の無垢の小幅板を表しにしたい。とのこと。

古民家風にしたいと、施主の強い要望があるのだそうです。


わたしは、「そうですか、、」と、どうしたものかと、図面を見直しました。

小幅板を貼る面積と、吹抜けの面積を合わせると、3/4以上になります。

これでは、2階建てと言うよりも、キャットウォークのある1階建てと一緒です。

これは、なかなかどうして、やっかいだな、、と、思案して黙っていると、


「小幅板は、けっこう厚いのを使う予定なのよ、32㎜だったかな~。これだけあれば大丈夫でしょ?」

意匠屋さんが、何を言っているのか、分かりせんでしたが、どうやら小幅板が厚いから合板の代わりになると誤解しているようでした。

この誤解を解くのが、また大変でした。わたしは、もともと説明が上手な方ではありませんから、、、。

でも、なんとかかんとか「構造的には、2階のほとんどが吹抜け空間になってしまう」ということを理解してもらえました。


「う~ん、だったら、火打ちを、ここと、こことに置けばいいかな?」

意匠屋さんは、図面の小幅板を貼る区画のところに、鉛筆で火打ちを書き入れました。

こんな大きな吹抜けに、多少の火打ちを置いたところで、焼石に水程度なのですが、、、。

「そうですね、、、それもいいですが、ところで、外壁の耐力壁は何を使う予定ですか?」

「たしか、1.0倍くらいの奴かな~、壁量計算では一応、OKなんだけど、、」

「もっと、倍率の大きい耐力壁を使った方が、いいです。この建物は豆腐のように柔らかいので、せめて外壁で固い殻を作ってあげた方がよいと思いますよ」

「倍率の大きい耐力壁って、どんなのがあるの?」

「え~と、このメーカーのですね、、、」

メーカーのサイトを、いくつか見せながら、なんとか外壁の耐力壁を変更する方向に話をもっていったのだが、意匠屋さんの様子からして、あまり乗り気ではないようでした。

壁量は足りているのに、なぜ変更する必要があるのか、その意匠屋さんにとっては、納得できないようでした。


今回のような、「吹抜け」と「耐震性」のトレードオフの問題を、意匠屋さんに説明しなければならないようなときに、うまく説明できて意匠屋さんの理解を得られた試しがないです。

わたしの説明の力がないせいかもしれませんが、、。

そのため、結局、構造的にはある程度の妥協をしつつも、ある一定の「耐震性」を担保するため、なかば強引に「こうしてください」とあれこれと変更を強要するようにした結果、意匠屋さんからは不興を買うことになることが多いです。


仕事といえども、人間ですから、人に嫌われるのは嫌です。

意匠屋さんの不興を買うことなく、できたら平穏に仕事をしたいです。

ですが、「吹抜け」があるとき、大抵は意匠屋さんと戦うことになってしまいます。

人と戦うのは、エネルギーを使うので、しんどいんですよね。。。

だから、わたしは、吹抜けが嫌いです。


蛇足ですが、「吹抜け」と「耐震性」とのトレードオフの問題について、意匠屋さんからお施主に、どれくらいの説明がなされているのでしょうか?

構造屋から、いくら説明しても意匠屋さんからは、不興を買うだけです。

ということは、、意匠屋さんから、まともにお施主さんに伝わっているとは、到底思えません。


わたしの、嫌いだの、しんどい、などの問題だけの話で済めば良いのですが、、、。

「吹抜け」と「耐震性」とのトレードオフの問題、もうちょっと、世間一般に認識されるべきなんじゃないんでしょうか、、、。


それでは、、また。

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